2017年1月29日日曜日

コイルビルドの美味い目安パラメータを考えてみた


Vapeのコイルビルドって経験談に基づく情報が多く胡散臭くて困る。
ワイヤ材質、ワイヤ径、コイル内径での美味い不味いには理があるはずだ。
そこでwirewizardとExcelと睨めっこしてある程度の目安を作ってみた。





# 美味いコイルビルドとは

1. アトマのデッキに収まり、(アトマ性能)
2. エアフローが良く当たり、(アトマ性能)
3. いい感じのミストが程よく発生する。(個人差大)

であろう。

コイルの表面積を増やせばミストは増えるのだが、
表面積が正義やでーとごついワイヤを無理やりアトマに押し込んでも
当然のことながらマズい。過剰な加熱になりがち。
吸い込み力でごまかせるっちゃごまかせるんだけど。
細すぎるワイヤもマズい。立ち上がりが弱く立ち上がってからは過剰な加熱。
つまりバランスの良い、美味い領域というものが存在することは明らかなのである。
ではそのバランスはどのように見いだせるのだろうか?


# リキッドが持つ熱容量

コイルの内側にはウィックに染み込んだリキッドがどっぷりといる。
コイルは発熱後、ミスト化に伴う冷却とこの内に持つリキッドへの熱移動を行っているはずだ。
このリキッドが持つ熱容量を考えてみよう。
厳密には異なるだろうが、VG100%でコットンが75%、VGが25%とした。
コットンの飽和水分量が25%とか書いてあったのでそうした。
コットンの密度 : 1.54~1.56[g/cm3]
コットンの比熱 : 1318[mJ/gK]
VGの密度 : 1.261[g/cm3] @Wikipedia
VGの比熱 : 2390[mJ/g*K] @八光電機


これを見ると内径×幅で熱容量がなかなかのレートで上がっていることが分かる。
まあ約せば体積だからそうなりますわな。


# コイルが持つ熱容量

めんどいのでWire Wizardの算出を信じてしまえ!
シングルワイヤでは以下のとおり。


内径ではそれほど増えない。巻数は長さが増えるので熱容量もごりごり増える。
まあ体積だから(ry


# リキッド/コイル熱容量比

主にクラプトンで表面積ハァハァするためビルド表を作っていたのだが、
いい感じと思えるビルドのこの数値が一定範囲に固まっていることに気が付いた。
1.0で±0.1程度が美味しく感じていたゾーン。1:1。
まあコイルが強けりゃ過剰に熱せられるし、リキッドが強けりゃリキッドに熱奪われちゃうよね。
そうなったら美味いわけがないんだから当たり前っちゃ当たり前だ。

検証のためにシングルワイヤでの表を起こしてみた。
隙間はコイルのワイヤ間隔で、0.01=ギチギチマイクロ、0.1~はスペースドになろう。


## Kanthal A1

※1 : 2mm径=28G、2.5mm径=26G、3mm径=24Gにおいて隙間0.01=マイクロコイルが適す。
なぜマイクロコイルが良いとされていたか、お分かりいただけただろうか?
それがしは長く続いたKayfun4/Lite時代、カンタル28Gを2mm径6~7巻マイクロで過ごしていた。
安心安定のコイルビルドでござった。

※2 : このパラメータは巻数では大きな変化がない。
なのでエアフロー/デッキサイズが許す限り巻きまくってそれに合った出力をすると
簡単に表面積が増え、結果としてミストがモックモクにできる。
巻数が多くて抵抗値が高くなってもModの出力制約に掛からなければ問題ない。

※3 : 2mmに26Gを使うといった細い内径に太いワイヤを使う場合は
スペースドにすることでバランスを取ることができる。
ただ、スペースドコイルは空間に対しての効率が落ちるのでおすすめできない。

## SS316L

※4 : Kanthal A1のマイクロビルドが適する内径・線径において、
スペースドビルドにすることでパラメータに適合できることがわかる。
ステンレス=スペースドの理屈がお分かりいただけたことだろう。
しかし、1段細いワイヤを用いるならばステンレスでもマイクロなのである。
カンタル26Gでマイクロしていたものはステンレス28Gでマイクロできるのである。
この時の熱容量はほぼおなじなので熱しやすさ/冷めやすさも変わらんのであるが、
表面積は熱容量が低いカンタルのほうが広くなる。効率面ではカンタルの勝利である。

なお、24Gで2mm径に対応するにはかなりの隙間を開けることでパラメータに
適合できるのだが、パラメータ的に合っていても美味いミストには程遠いであろう。
隙間の幅にも限度があるように思う。隙間は少ないほど良さそうである。

## Titanium Grade 1

チタン=マイクロ推奨の理由がお分かりいただけただろうか。
2mm径には26Gのマイクロ、2.5mm径には24Gのマイクロとカンタルより一段太くできる。
チタンは比重が軽いために熱容量が低くなりその結果カンタルよりも更に太い線を用いることが可能だ。


# クラプトンワイヤで検証してみる

クラプトンワイヤはどうしても熱容量は大きくなる傾向にあるが、
ミスト量を引き出すためのキーパラメータである表面積を得ることができる。
ツイストワイヤもクラプトンほどではないが同様の効果を持つ。
そんなクラプトンワイヤについてもこのパラメータが使えるのか確認してみよう。


## SS316L 26G+30G

それがしが最初にクラプトンしたのは既製品でUDのSS316L 26G+30Gである。
DLする分には味はそれなりに出るのだが、弱くMTLで吸うとアカン。
またアトマがアチチになるのもアカン。
その時のビルドが3mm~3.5mmの4巻で線径分はスペースを取ったビルドであった。
このごついコイルをマイクロするのに必要な内径は計算上は6mmですって。
追加でパラメータ適合する4mm径1mm幅でやってみたがどうにもマズい。
このパラメータは内径が大きい時か隙間が広すぎる時に不整合がありそうだ。

## SS316L 28G+34G

クラプトンを自作するようになってまず安定した味にたどり着いたときのワイヤ。
当時は意識していなかったがパラメータがちゃんと収まってる。
大分ナローなクラプトンワイヤになるが、それでも2.5mm径程度では広い隙間が必要。
4mm径ならマイクロオッケー・・・なのか?(未検証)

## SS316L 28G + Kanthal A1 34G

ここで材質違いによるクラプトンを示す。
上記と線径は同じだが、マイクロ可能な内径は4mmから3.5mmに落とせる。
クラプトンコイルの抵抗値はほぼ芯線の値となるため、芯線に温度管理可能なワイヤを
用いれば外周が温度管理非対応であっても温度管理可能なのである。若干ズレるけど。
素材が持つ熱容量を考慮すると外周にはステンレスよりカンタルを用いたほうが効率は良い。
効率は良いのだが、テンパーカラーが付かなくて美しくないというデメリットがある…。

## SS316 0.8x0.1+36G/0.8x0.2+34G

フラットクラプトンは表面積にアドバンテージを得る。フューズドクラプトンも同様。
しかし表面積効率的にはシンプルなクラプトンをマイクロで埋めた方が良かったりする。
前者は2.5mmでKayfun5へ、後者は3.5mmでHadalyに入れていい感じであった。
後者を2.5mmでKayfun5に入れた場合は「重い」味であった。この時の比は0.65。

## Kanthal A1 28G + 38G

PROMIST VAPORで販売されているナロークラプトンの既製品である。
2.5mm5巻で0.8Ωと書いてあるが、0.3mm+0.1mmならば1.2Ω、28G+38Gならば1.1Ω程度のはず。フッシギー。
まあそれは良いとしてパラメーターをみてみると、マイクロコイルでいい感じの数値が出た。
少し間隔を空けても良好であろう。美味いと評判なのも頷ける。
ナロークラプトン既製品は他に選択肢ないし。

## Titan G1 32G+Kanthal A1 38G

熱容量的に最強なワイヤはチタンであると前項に示したが、これはクラプトンにも用いれるはずだ。
ググっても日本語の情報はなく、海外でもチラホラとうめぇうめぇ言ってるのが散見される程度。
実験用にまず届いたのが30Gと32Gなので、これを使った省エネクラプトンを作ってみた。
※なお仕方なくCrazy Wireの製品を購入したが、大変汚いのでオススメしない。

Kayfun Mini V3がターゲットのため内径は2mm。巻数はもう少し増やせるが省エネ重視で7とした。
外周もチタンが良いのだが、販売されているチタンは34Gまで。仕方ないのでカンタルを用いる。
抵抗値は温度変化を考えると250℃付近で1.8Ωに達するが省エネだし高出力不要なので問題ない。



結果は大変良好で素晴らしいミストが15W弱で発生する。
本当は10Wぐらいでいけるんじゃないかな!?と思っていたのだが、
チタンの冷えやすい性質とクラプトンの表面積のためか、高めの電力を必要とした。
TC挙動がややズレたのでTemp Cof.は400に上げて丁度よい具合になった。

なお細いチタンワイヤはスプリンギー(びよんびよん)のためデッキへの組み込みや
マイクロビルド形成はなかなか難易度が高い模様。あと芯線が断線しやすい。
抵抗値も高めになってしまうがこれは8巻のところを4+4巻のパラレルにしてやることで
抵抗値は1/4にもできる。出力がいるときはそうしてしまえば良い。

## Titan G1 30G+32G

純チタンクラプトン。できれば4ゲージは離れたワイヤを使いたいのだが、
手元にないので無理やりやってみた。

焼き失敗。たぶん酸化チタンいる。
芯と外周の線径が近いとホットスポットができやすい気がする。
これは見なかったことにして・・・


綺麗だね!
本当はマイクロ気味にしたいのだけどビヨンビヨンで厳しい。
そのためパラメーターが+方向に外れていると思うが、アトマのアチチ現象が起こった。
アトマのアチチはパラメータを外すと起こりやすいと思われる。


# 総括

このパラメータはマトモな味を出すためのビルド指標として十分機能する。
マイクロコイルやステンレスでスペースドコイルが推奨される理由も示すことができた。

ただ吸い方やその他もろもろの影響で値がハズレていても問題ない場合や、
値が合っていてもビルドがアトマに合っていない場合には味が出ないなど絶対的なものではない。
ウィック素材やウィックの入れ方でも大分状況が変わってしまうことだろう。

これは推測だがマイナス方向の域外はエアフローの強さによってカバーできる。
ごっついワイヤーでもエアフローとミスト化の冷却力で過加熱を防げると思われる。

またマイクロ/スペースドに関しては極力マイクロにしたほうが対空間における効率が良い。
抵抗値を意識しなければいけない高出力ビルドやメカ向けビルドでないのなら、
適切なワイヤでマイクロコイルにして巻数を増やしたほうが良好な結果を得ることができるだろう。
ホットスポットとの戦いもあるのでごく狭いスペースドが安定しそうだ。

終わりに、コイル幅とコイル熱容量の目安と簡易計算フォームを用意してみた。
自分用でもあるので雑ですまん(´ε` )


# コイル幅毎の推奨コイル熱容量

巻数じゃないので注意されたい。


# 簡易計算フォーム

コイルパラメータを入力して計算ボタンを押してねー。
ワイヤ線幅(太さ)やコイル熱容量はWire Wizardからコピペしてねー。
熱容量比が0.9〜1.0が良いとおもー。
おすすめ隙間幅は指定パラメータに適した隙間を計算するよー。
デフォルト値はKanthal A1 26AWGの値が入ってます。

コイルパラメータを入力

コイル内径[mm]
コイル巻数
コイル隙間幅[mm]
ワイヤ線幅[mm]wirewizのDiameterまたはWidthを入れる
コイル熱容量[mJ/K]wirewizのHeat capaityを入れる


リザルト

コイル幅=[mm]
熱容量比=
おすすめ隙間幅=[mm]


2 件のコメント:

  1. お宝発見。
    ありがたく参考にさせていただきます。

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  2. コメント失礼致します。
    こちらのページからwire wizのサイトに飛び色々な設定を試してみたのですが、「コイルセットアップ」のLeg lengthが良くわかりません。
    どのような設定にすれば良いかわかりましたら、ご教授くだいませ。

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